マイケル・チミノ読本
¥1,800
『ディア・ハンター』で世界的な注目を浴び、『天国の門』で伝統あるハリウッドのスタジオを消滅させたマイケル・チミノ。
70年代〜80年代アメリカ映画の光と影を一身に背負った映画監督のすべてがこの1冊に。
かつてないスケールでハリウッドを揺るがせた、映画史上もっとも呪われた問題作『天国の門』。オリジナル・ネガも散逸しもはや修復不可能と言われていた映画が、デジタル技術による修復・復元によって鮮やかに蘇り、『天国の門 デジタル修復完全版』として、この10月に念願の日本公開となる。
本著には、約30年ぶりに姿を現すその映画の製作秘話、当時の証言の数々などを載録していると同時に、チミノ本人の生い立ちから脚本家時代、そして監督デビュー以降の各作品の詳細な解説とさまざまなエピソードを掲載。また、チミノのたどった苦闘の歴史とも言える、頓挫して映画化に至らなかった数々の企画も、初「公開」!
ハリウッドとの戦いの歴史を通して、アメリカ映画の1970年代から90年代を、裏側から照射する1冊ともなっている。
■マイケル・チミノ Michael Cimino
1939年生まれ。イェール大学では美術を専攻し、63年に修士号を獲得。同年ニューヨークへ移り、60年代後半にはTVコマーシャル演出家に。71年ハリウッドに移り、脚本執筆を始める。73年には『ダーティハリー2』の脚本をジョン・ミリアスと共同で手掛ける。このときクリント・イーストウッドと知り合った縁で、イーストウッド主演の犯罪もの『サンダーボルト』(74)で監督デビュー。そしてヴェトナム戦争へ赴いた若者たちが辿る悲劇を叙事詩的に描いた大作『ディア・ハンター』(78)で世界的な評価を得るのだが、その評価を背負って製作された『天国の門』(80)で大幅に予算をオーヴァー、歴史に残る赤字を記録した。その後の映画製作は思うに任せず、長編監督作は『イヤー・オブ・ザ・ドラゴン』(85)、『シシリアン』(87)、『逃亡者』(90)、『心の指紋』(96)の4本のみ。近年、50年代のアメリカ大陸横断(ニューヨークからノース・ダコタおよびミネソタ国境まで)を背景に、三人の男を愛するひとりの女を描いた小説『ビッグ・ジェーン』(邦訳は04年、ソニー・マガジンズ刊)を発表している。
目次
◆ある新人監督の誕生──監督第一作『サンダーボルト』(74)まで
幼少期から学生時代/テレビコマーシャルの演出家/ハリウッド映画の脚本家に/『サンダーボルト』/『水源』とそのほかの頓挫企画
◆『ディア・ハンター』
あらすじ
解説
発端/ロケハンと脚本執筆/ロバート・デ・ニーロとヴィルモス・ジグモンドの参入/ジョン・カザールとメリル・ストリープ/撮影開始/操作された「リアリティ」/もう一つの「リアリティ」/タイでの撮影/ロシアンルーレット/非職業俳優たち/チミノの演出法/編集作業と『ゴッド・ブレス・アメリカ』/公開後の反応
◆『天国の門』
あらすじ
解説
題名の由来/見直し論的西部劇/視覚的リアリズムの追求/『ディア・ハンター』との連続性/音楽/円運動/ジョンソン郡の戦い(事件発生の前提/ワイオミング家畜飼育業者協会(WSGA)の結成/計画の実行/ネイト・チャンピオンの死/包囲戦/逮捕と拘留/対立するイデオロギーと事件の持つ政治的意味/「ジョンソン郡の戦い」とさまざまなフィクション作品)/『天国の門』の製作(マイケル・チミノへのインタヴュー/ヴィルモス・ジグモンドの談話/撮影現場レポート)/撮影素材の編集と複数の「完成版」/ユナイテッド・アーティスツの終焉とハリウッドメジャー・スタジオの変化
『天国の門』の出演者たち
◆『天国の門』(80)の失敗を経て──『イヤー・オブ・ザ・ドラゴン』(85)以降
一九八〇年代前半の頓挫企画/『イヤー・オブ・ザ・ドラゴン』/一九八〇年代半ば頃の頓挫企画/『シシリアン』/一九八〇年代末期〜一九九〇年代前半の頓挫企画/『逃亡者』/『心の指紋』/一九九六年以後の頓挫企画/“新生チミノ”をめぐる醜聞/『天国の門』二つの修復版製作とチミノの“名誉回復”
主要参考文献
マイケル・チミノ フィルモグラフィ
商品詳細
仕様: A5判 192ページ
ISBN: 978-4-9904938-6-8
発行: boid
著者: 遠山純生 編・著